はじめに

現在の私たちを取り巻く環境

『地球温暖化』という言葉を耳にするようになって、どのくらい経つでしょう。私は子供の頃に初めて聞き、あまりに怖いことだと思い衝撃を覚えました。氷河期にマンモスが絶滅した、そのイメージが頭に浮かんだのです。しかしまだ子供だったため、具体的なことは何も分からずにいました。

そこから数十年。実際に地球の温度は徐々に高くなり始め、本来ならばもっと危機を感じなければならない状況にあります。IPCC第5次評価報告書(2014)では、最悪の場合2100年の平均気温は最大4.8℃上昇すると発表しました。世界中で会議が行われ早急な対策が求められていますが、私たちの周りではどうでしょう。日々の生活で地球温暖化を意識出来ている方がどのくらいいるのでしょうか。「二酸化炭素」「温室効果ガス」など、名前は知っていて、それが地球温暖化につながるということも知っている。けれども、実際にどうしたらいいのか?になると分からない。現在の日本では、そんな方が多いと思います。

そうやって日々を過ごしているうちに、異常気象、PM2.5による大気汚染など新たな問題がどんどん出て来ています。私たちは今、身近なところから環境を見直さなければなりません。

『地球温暖化』によって日本はどうなる?

日本の平均気温(年間)は上昇し続けています。その割合は、100年あたり1.15℃です。世界の気温上昇は100年あたり0.85℃ですので、日本は世界の倍近くの上昇率です。その影響で猛暑日も年々増え続け、局所的な集中豪雨などの異常気象に見舞われるようになってきています。猛暑日や熱帯夜が増えると、日本脳炎などの感染症が発生する可能性も高まります。海面が1メートル上昇すると、東京都の東部や大阪府の一部は水没する恐れがあります。

地球温暖化というと、「北極の氷がなくなる」といった、どこか遠い国の話と思ってしまいがちですが、ここ日本でもその影響は年々加速しており、対策は急務なのです。

屋上に緑を

緑と私たちの暮らし

緑、好きですか?色としてのみどりではなく、植物という意味の緑です。「田舎が嫌い」「虫がいるからイヤ」なんて方は多いでしょうが、緑そのものが嫌いな方はあまりいないと思います。公園には木々があり、普段歩く道もふと足もとを見るとタンポポが咲いている。隣の庭の桜の木を愛でたり、花屋さんの前でちょっと立ち止まってみたり、部屋に観葉植物を置いてみたり。昔はそこら中に田んぼや畑もありました。子供たちは木登りをしたり、土手でつくしを摘んだりして遊びました。緑は昔から、私たちの生活のすぐ近くにあったのです。

現在では都心部だけではなく郊外でも、道路や土手など様々な場所の整備が進んでいます。アスファルトやコンクリートが増え便利になった反面、緑は確実に減っています。わざわざ意識して保護したり、新しく作ったりしなければならない状況になってしまったのです。

緑が私たちに与える効果

緑を見るとどんな気持ちになりますか?癒されたり、元気が出たり、緊張がほぐれたり。緑は様々な心理的効果を持っています。

近年では、園芸療法やガーデンセラピーなどが流行しており、様々な施設・空間、そして治療として緑が取り入れられるようになりました。緑の香りには、脳の疲労回復を助けてくれる効果があります。緑のそばで深呼吸をすると頭がスッキリする、あの現象です。また、認知症の分野では古くから園芸療法が用いられており、精神面で改善傾向が見られたという報告が数多くあります。緑に触れることは五感を適度に刺激し、脳を活性化させることで身体機能の維持・賦活を図ります。パソコンなどの作業による視覚疲労に対して、鉢植えや芝生などの緑を見ることで疲労が緩和・回復されることが研究で明らかになっています。

緑を通して他者と交流することで、コミュニケーションが円滑となり、そこにコミュニティが生まれることで地域の活性化も図れます。

緑を育てることで生命の移り変わりを学ぶことが出来、情操教育にもつながります。省エネ、環境保護など環境問題について考えることも出来ます。

ストレス社会といわれ、環境破壊が進んでいる現代。緑をうまく生活に取り入れることが、健康的な毎日を過ごす鍵になります。

緑が環境に与える効果

植物は光合成をし、二酸化炭素を酸素に変えます。二酸化炭素の排出量増加が地球温暖化の原因の一つであることを考えると、緑を増やすことは単純に二酸化炭素の減少を促し地球温暖化を防ぐことにつながります。また他にも、植物には大気浄化機能があり、二酸化窒素や二酸化硫黄などのガス状汚染物質を吸収・吸着したり、ホルムアルデヒドやベンゼンを除去したり、PM2.5などの粒子状汚染物質を捕捉したりすることが分かっています。都市部の大気汚染に対して、緑を取り入れることは非常に有効です。

都市部では特に、郊外に比べて気温が高くなるヒートアイランド現象が問題となっています。様々な要因が挙げられていますが、大きな要因は二つ。一つは、森林や水面、草地などの植生域がアスファルトやコンクリートなどに変わって来ていること。もう一つは人工排熱(人間活動で生じる熱)の影響です。植生域では、水分が蒸発するときに熱を消費するため、日中を中心に気温の上昇が抑えられます。一方、アスファルトやコンクリートなどの人工被覆域は暖まりにくく冷えにくい性質があります。そのため日中の日差しにより熱を蓄えてしまうと、夜になってもその熱を保持し、大気へ放出し続けます。結果、夜間の気温低下が妨げられてしまうのです。都市部では様々な産業活動や社会活動によって多くの熱が排出されますが、植物の蒸散作用を利用すれば排熱を抑えることが出来ます。また、グリーンカーテンなどで知られる植物の遮熱効果を利用すれば、冷暖房の使用を抑えることが出来、結果、二酸化炭素の排出を軽減したり、排熱を抑制したり出来ます。

近年では都市型の災害として、集中豪雨や台風などによる水害が問題となっています。アスファルトやコンクリートだらけになってしまった街に多量の雨が降ると、水を蓄えることが出来ないため地下鉄や地下街に流れ込みます。最近では東京や福岡で地下街やビルの地下が水没し、都市機能が停止したり死者が出たりしています。都市部に緑が増えれば、水を蓄えゆっくり排出する性質を利用し、急激な雨水の流出を抑えることが出来ます。災害に強い都市作りが可能なのです。

緑が建物に与える効果

緑は、建物を保護する効果もあります。具体的には、屋上や壁に緑を取り入れることで直接的な熱や外気の影響を受けにくくすることが出来ます。アスファルトの地面がかなりの温度になっているときでも、芝生はさほど熱くならないことからもイメージしやすいと思います。建材は熱により膨張・収縮をするので、それを抑えることで耐久性も向上します。物理的に外気から保護されることで、劣化を防ぐことも出来ます。

また、生木には防火・防熱の効果もあるため、その意味でも建物の保護効果があります。生木は発火を抑えるだけでなく、火災時には輻射熱を大幅に低減させます。街路樹に火事の延焼を防ぐ効果があることは有名ですが、それと同様のことが言えます。街や建物に計画的に緑を取り入れることで、効果的な避難経路の確保など防災にも役立ちます。

未来へ向けて

緑を増やすには?

では、どうやって緑を増やし、私たちの生活に取り入れることが有効なのでしょうか。

新たに公園を作るには土地が必要です。既存の建物を取り壊す必要もあるかもしれません。大掛かりな都市緑化計画が必要でしょうか。非常に有効ですが、行政が数年~十数年かけて取り組む仕事であり、実際の実施までにはかなりの時間と費用を要します。

一方、外へ出て周りを見渡すと、街中にはビルや公共施設がたくさんあります。その屋上には何がありますか?多くの建物は屋上がただの空間となってしまっていることが多いのです。この空間を有効利用出来ないでしょうか。

『屋上緑化』のある生活

そこで、『屋上緑化』を取り入れるとどうなるでしょうか?

無機質な建物に癒しの空間が生まれ、周囲からの景観も非常に良くなります。そのような建物が増えれば、街全体の景観も向上します。屋上緑化を自治体が推奨すれば話題となり、自治体そのものの評価も高まります。

病院・学校・会社などであれば、庭園・公園のような空間を作ることで憩いの場が生まれます。休憩時間やお昼休みに気軽に利用したり、外部の方との交流の場としても利用出来ます。自然の中で休憩した後は、仕事や勉強の能率があがります。自然の中でリハビリをすれば訓練室の中よりも意欲が高まり、治療効果が上がることも期待されます。

商業施設などであれば、少し大掛かりな体験型のスペースとしても活用出来ます。買い物のついでに季節を感じたり癒されたりするだけでなく、田植え体験のイベントをしたり、植物の名前を当てるクイズラリーをしたり、工夫次第で集客のメインにもなります。自然は四季折々移り変わるので、年間を通して様々なイベントが計画出来ます。大阪駅にある大阪ステーションシティは、駅直結、ビルが立ち並ぶ梅田の街の14Fに【天空の農園】というオアシス空間を作りました。都会の中にありながら、日常を忘れゆっくりとした時間を過ごせる憩いのスポットとして、2011年のオープン以来各メディアでも取り上げられ続けています。週末や長期休暇の期間にはイベントが開催され、家族連れを中心にかなりの集客効果を上げています。同時に、大阪梅田のイメージアップ、環境保全にもなっています。

 

最後に

技術が進歩し、そのことにより私たちの生活も環境も変わってきました。21世紀は変革の時代です。一方で、今まで共に過ごしたものを取り戻さなければならない時代でもあります。失ったことによって、様々な弊害が生まれて来ているからです。

屋上緑化は、今この時代に適した方法です。環境の保全・改善に役立つだけでなく、経済的効果も期待出来ます。街全体に屋上緑化が進めば、環境共生型の都市づくりが実現します。

未来のために、屋上緑化を始めませんか。